クリックすると拡大します
カスタマーレビュー数:17
ランキングには入っていません
ランキングには入っていません
ランキングには入っていません
ドストエフスキーがスターリン時代まで生きていたとしたら
2007-09-15
15人中 10 人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
売れてますなあ亀山新訳『カラマーゾフ』!! ドストエフスキーファンには周知の第2部『カラマーゾフ』を空想するというたまらなく魅力的な構想の本書も、亀山郁夫という稀代のロシア文学者の誠実さと「科学精神」にあふれた好著である。 <br />末弟アリョーシャが、ロシア皇帝という「母国の父」を殺すことになるのかというプロブレマティックは、河出版全集の完訳者米川正夫も指摘していたが、亀山は少年コーリャをその実行者として想定し、証拠固めをしてゆく。その手際には畏れ入った。本書を読んでいてしきりに残念に思ったのは、江川卓の早世である。彼の『謎解き』シリーズをもっと読みたいと思ったのだ。 <br />さらに、作家ドストエフスキーには、スターリン時代まで生きていて欲しかったという、叶うべくもない夢想に浸ってしまった。
「幻の作品」が見えてくる!
2007-12-24
9人中 6 人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
「カラマーゾフの兄弟」の新訳を手がけたドストエフスキー研究の第一人者が、〈幻の続編〉を空想するという知的ロマンの書だ。大まかな構想だけ示された続編については「三男アリョーシャの皇帝暗殺物語」との見方が支配的だが、本書では想像力あふれる斬新なプロットを提示しているのが注目される。 <br /> <br /> 著者はオリジナル作品の暗示的な「序文」や、続編への伏線とみられる謎めいたディテールをはじめ、作者の残したメモ類、同時代人の証言など、客観的データを多角的に検証。想像の翼を広げ、続編の輪郭や骨格をイメージしていく。そのまるでジクソーパズルを1枚ずつはめ込んでゆくみたいな丹念な作業を経て構築したのが、以下のようなダイナミックでスリリングなストーリーだ。 <br /> <br /> ……本編の舞台から13年後、1879年のロシア。キリスト教布教者アリョーシャはモスクワの大学を卒業し、村の学校で教えるかたわら、新しい信仰を広めてゆく。一方、少年時代から彼と交流があるコーリャ・クラソートキンらの〈弟子〉たちは成人し、コーリャが中心となり革命組織を結成、列車爆破による皇帝暗殺計画を練る。そして、組織は皇帝暗殺後のリーダーにアリョーシャを据えようと決議。コーリャはアリョーシャに就任の要請をするが、ふたりはテロルか融和かをめぐり対立。その後、暗殺計画が漏れ、テロ決行前日、コーリャは逮捕される……。 <br /> <br /> ざっとこんなプロットだが、著者は様々な根拠を挙げ、従来のアリョーシャ=皇帝暗殺者説を否定。事件の首謀者をコーリャとし、アリョーシャは間接的な関与にとどまるとの創見を示す。その背景に設定した1879年というのはドストエフスキー死去の2年前、国内で政府要人に対するテロルの嵐が吹き荒れた年である。 <br /> <br /> 全体の構成は本編同様、「4部+エピローグ」形式を想定、各部各編の展開もラフスケッチ。さらに、本編を彩る登場人物、カラマーゾフの長男ドミートリー、次男イワンをはじめ、カテリーナら女性陣のその後の足取りを描いているのも興味深い。 <br /> <br /> このほか、壮大な物語に採用されたであろう、ロシア正教異端派の「性と信仰」のモチーフを幅広い観点から論考するなど、全体として著者の学識とイマジネーションが発揮され、ライトな新書らしからぬ読み応えがある。 <br /> <br /> ……空想、仮説とはいえ、おぼろげに見えてきた「幻の作品」。もし、世に出ていたなら……。 <br />
堅実な空想をよしとする
2007-09-24
12人中 7 人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
ここまでやってしまう、というのは、ドストエフスキー的過剰というべきなのだろう。 <br /> ドストエフスキーの脳髄の端っこを覗くことができただけでも功績は大というべきか。 <br /> しかし確実にいえることは、非常に堅実に空想された科学的な続編だということだ。研究者としての良心がずいしょに見えるのが、好ましい。アリョーシャが皇帝暗殺者にならない、ということの証明のためにあれだけ熱をこめて説明する態度が感動的である。大江健三郎氏が、朝日のエッセーでも書いていたが、第二の小説の主人公をコーリャ・クラソートキンと見定めたのは、慧眼である。何よりもそれを、第一の小説の細部から浮かびあがらせているのがよい。しかし、不満がないわけではない。爆発的な想像力という点で、その学問的な態度が少し邪魔をしていることだ。もう少し羽を伸ばしてもよかったのではないか、という思いが残る。しかし、責任を持って語れるぎりぎりの地点はこのあたりなのかもしれない。
がっかりでした
2008-03-07
14人中 8 人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
タイトルから、非常に魅力的に感じて買いました。 <br />とてもがっかりしました。 <br />空想というより、妄想という感じでした。 <br />興味の無い個人哲学を延々読まされた気分です。 <br />カラマーゾフの兄弟を好きな人でも <br />本書を買うときはよく考えたほうがいいと思います。
未完の大作が空想を刺激する
2009-09-16
1人中 1 人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
『カラマーゾフの兄弟』は未完の大作である。 <br />作者ドストエフスキーの死によって『カラマーゾフの兄弟』の続編は永遠に謎のものとなってしまった。 <br />そこで翻訳者である亀山郁夫さんがドストエフスキーの生涯と作品を比較検証しながら、こうであろうという事を想像しながら続編の空想をし、自説を展開しながら「謎」に迫ろうとしている。 <br /> <br />本書は『カラマーゾフの兄弟』を読了して熱が冷めやまないうちに一読するに値する本であろうと思う。 <br /> <br />しかし、『カラマーゾフの兄弟』はいたるところに続編への伏線を残しながらも、形式的な美というものを感じさせる作品であり、それ自体で完成度の高いものとなっている。 <br /> <br />本書はあくまで続編であるならこうであろうと言う著者の一つの「空想」を提示したものであり、本来的な意味では真の続編は『カラマーゾフの兄弟』を読了した人達個々人の心の中で千差万別な彩を見せる永遠の謎の作品として存在するものであろうと思う。そこが作品の面白さの一要素となっている事も見過ごしてはならない。 <br /> <br />「はっきり言っておく。一粒の麦は、地に落ちて死ななければ、一粒のままである。だが、死ねば、多くの実を結ぶ」(ヨハネの福音書、12章24節)。 <br /> <br />この聖書の引用がその後の登場人物達の運命を示唆しているであろう事を予見している。 <br />