クリックすると拡大します
カスタマーレビュー数:109
評論・文学研究 >
36位
内容よりも雰囲気を訳した作品
2007-03-21
175人中 157 人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
私は現在アメリカのロスアンゼルスの高校三年生ですが、此処では「グレート・ギャツビー」は必修科目です。高校三年の英文学のカリキュラムはアメリカ文学史。ヘミングウェイ、フィッツジェラルド、スタインベックと進んでいきますが、その中でも一番重点を置かれるのがこの「グレート・ギャツビー」。私が村上訳を読もうと思ったきっかけは、私の英語の先生が「日本で有名な作家のムラカミという人がギャツビーを訳したが、それはとてもいい訳だとウォールストリート・ジャーナルで読んだ。是非読んでみないか?」と進めてきたからです。 <br /> <br />三島由紀夫を英語で読んでもいまいちなように、フィッツジェラルドを日本語で読むなんて!と最初はあまり乗り気ではありませんでしたが、「ノルウェイの森」や「海辺のカフカ」など他の村上さんの作品は愛読していたので、「まったくイメージが違ったとしても、『村上の作品』として読めばいいかな」と思って注文し、読んで見ることにしました。 <br /> <br />原文でかなりの衝撃を受けた私ですが、この訳にはさらなる衝撃を受けたといわざるを得ません。訳が見事なのはもちろんですが、あらゆるギャツビー関連のエッセイを授業で読んだ上で、なんともいえない解釈の深さに驚きました。言語が違ってしまうと醸し出す雰囲気も当たり前のように変わるものですが、村上さんの描くギャツビーは、まさしく僕のイメージのギャツビー、いや、アメリカで学ぶフィッツジェラルドの描こうとしたギャツビーそのものなのです。 <br /> <br />ただ単に、筋が通るように語句を並べて訳しているのではなく、フィッツジェラルドの原文に等しい「雰囲気」を作り出すように丁寧に言葉を選んでいるのが伝わってきます。もちろん数箇所は「ここは(作り出す雰囲気が)原文の通りじゃないな?」とか「あれ、此処は意味が隠れているはずなのにな?」と思うところもありますが、それ以外は「もしかしてフィッツジェラルドって日本語も書けたのかい?」と思わず唸ってしまうほどの出来です。 <br /> <br />ヘミングウェイやカフカの和訳でよく見られるように、訳された作品には「内容」を重んじたものが多いです。つまり、同じストーリーは伝わるのですが、そこから感じられるイメージ、雰囲気、感情の揺らぎなどはなかなか伝わりません。和訳を読んでから原文を読んだり、その逆をしたりすると「あれ?このキャラクターってこんな風に思っていたんだ」と驚いてしまうことが多いです。 <br /> <br />しかしこのギャツビー、全てのキャラクターが、原文と同じように考え、行動し、会話や動きからは原文と同じ雰囲気を作り出してくれます。これはもう、神業です。かなりのギャツビーファンとして、映画版も何バージョンか観ましたが、それよりもこちらのほうがより正しく、よりフィッツジェラルドらしいムードを作り上げてくれます。 <br /> <br />原文を読んだことある方も、「いい作品と聞いていたけど、結局は訳だからなぁ……」と悩んでいる方にも、是非是非お勧めです。 <br /> <br />唯一気になる点は、「Gatsby」は「ギャツビー」ではなくずっと「ギャッツビー」だと思っていたところですかね。人によって発音は違うみたいです。アメリカでは後者が主流。(笑 <br /> <br />以上、文学ヲタによるレビューでしたっ。
「この世の中の人がお前のように恵まれているわけではないことを、ちょっと思い出してみる
2005-07-10
30人中 26 人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
いわずと知れた「失われた世代」の作家フィッツジェラルドの代表作。<br>はっきりとした起承転結、絡み合う人間関係、伏線と予定調和、そして状況描写→心理描写→風景描写と続く叙述――<br>いわゆる普通の小説らしさをきっちり備えたこの本の傑出したところは、印象的な風景描写と物語との相関性、そして視点人物にあると思います。<br><p>多くのシーンが、あらゆるものが金色に染まる夕刻から始まり、喧騒と孤独な夜へ、そして全てをあからさまにする朝へと描写される様が<br>そのままストーリー全体を象徴しています。その描写一つ一つがとても美しくも儚い。例えば、<br>「夕映えの色は褪せ、彼女の面からも、黄昏に楽しく道路から去っていく子供のように、あとに心を残しながら刻々と光は消えていった」<br><p>この小説の最大の特徴は視点人物のニック・キャラウェイの存在にあります。<br>彼の冷静でいて達観したかのような叙述が特徴的で、また彼が経験を重ね成長するにつれ、事件や人物に対する印象が少しずつ変化していくのも読み取ることができます。<br>ひと夏にして豪華・壮麗と虚栄・孤独を目の当たりにしながら、最後に彼はこの父の言葉の意味を知ることになります。最後まで読んでみて下さい。
英語の勉強に
2002-02-27
5人中 5 人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
3時間もある朗読CD。<br>だけど、はしょってる部分も結構あるので、<br>英語の勉強に使うときには注意です。
傑作!
2005-07-06
19人中 15 人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
語り部である"私"が、はじめてギャツビーを見かけるところ。夏の夜、海の入り江の向こう岸に向かってギャツビーが手を広げて震えている場面。"私"は、彼が見ている方向を見ても、一つの小さな緑色の光が見えるだけで他には何もなかったという下り。素晴らしく印象的で、ギャツビーの性格、そしてフィッツジェラルドという作家の本質を良く表していると思います。失ったものを取り返そうとする焦燥感。上辺だけの嘘。空虚な人間関係。無気力さ。悪。そして激しい恋心。そういった要素が浮かんでは消え、気怠く展開していくこの話を何回読んだのかな。Matthew J. Bruccoliが序文を付けたこの版では、何バージョンかある原稿の中から、フィッツジェラルド自身が最終原稿としてまとめたもの。つまり、彼自身原稿を何度も何度も書き直しているということであり、この本こそ彼の最終原稿であるという訳です。フィッツジェラルドの著作の中では、構成力と登場人物の性格づけという意味においても最高傑作かと思います。大推薦!
素晴らしいかもしれない
2006-11-20
33人中 24 人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
野崎訳の同書を読んで、なんとなくその素晴らしさをわずかに感じていました。でも、それがどういうことなのか分からない。フィッツジェラルドの来し方に触れるものであるということは間違いない。でも、そこに何があったのだろう?そう思って野崎訳を数回読んだものです。 <br /> そして、今回村上春樹訳の本書が出るということで期待して読みました。前々から、村上さんは「グレート・ギャツビー」を翻訳したいと色々な場で言ってましたし、「ノルウェイの森」にも出てきました。それを知っていたので、「いよいよ来たか」という感じでした。 <br /> 読んだ感想としては野崎訳とは違うものでした。とにかく読みやすい。意外に古い作品なんだってことを再認識させてくれました。今まで、そう思わせなかったのは野崎孝という翻訳家の才能によるものでしょう。 <br /> ニック・キャラウェイの立ち位置、ジェイ・ギャツビーの悲哀、すべてが解けるように僕には感じられました。そういうことだったのか・・・と。 <br /> 同時に野崎訳とのズレもあります。それは致し方ないことです。英語で書かれた文章を完璧に移し変えることなんて不可能なんです。しかも、時代も違う。それに耐えうる作品が名作として残るんですよ。 <br /> 「グレート・ギャツビー」は劇的な感想は抱けないものだと思います。しかし、じわじわとくる印象があります。読者が経験することによって、「こういうことだったのか」という不思議なシンパシーめいたものを感じることの出来る作品だと思います。想像以上に深い作品だなと改めて思い知りました。 <br /> でも、この作品の本質というか、全体的な「これはこういうことだ!」という感想が抱けないんですよね。これは決して悪いことではありません。逆に可能性を感じるくらいです。それは作者、訳者の責任ではなく、読者の責任でしょう。 <br /> この作品をちゃんと理解できるようになりたいです。