クリックすると拡大します
自らに置き換えて読むと・・・
2008-08-01
154人中 139 人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
「あぁ、あの事件を扱った本か」と書店店頭で手に取り、いつもの癖で帯に書かれた文言を目で追っていく。背側に回り、そこにあった本村氏が辞表を提出した際の上司の言葉に心打たれた。「労働も納税もしない人間が社会に訴えても、それはただの負け犬の遠吠えだ。」自分が上司だったら、こんな言葉をかけられるだろうか、と思った。 そして、プロローグに書かれた「僕は、・・・僕は絶対に殺します。」という本村氏の言葉に頷いた。そして、本書を購入することにした。 幼子を持つ身として、自分が当事者だったら同様の気持ちを持つだろう。司法の壁の前に不本意な判決を受け、「早く被告を社会に出して、自分の手の届くところに置いて欲しい。私がこの手で殺します。」という言葉にも頷いた。 それだけではない。泣いた。泣くために買った本ではない。読んで泣くつもりもなかった。しかし、殺害状況や公判の様子、人々の言葉や行動に度々涙した。本を読みながら、これほど泣く経験は初めてだった。それほど、憤り、絶望し、考えさせられた。 少年法、犯罪報道、司法の現状、人権擁護、死刑制度、被害者救済、それぞれの事柄にそれぞれの考えを誰しもが持っているだろう。ひとまずはそれらを置いて、読み、考えればいい。 読み終えての感想は、本村氏にしても孤独であれば、復讐しか考えなかっただろう。人とのつながりが、彼を支え、世の仕組みを変えていったのだ。ならばこそ、その関係を断ち切る殺人は、何事を持っても贖うことの出来ない行為なのだと、改めて思った。
理不尽さと闘った青年の苦悩が問いかけるものの重み……
2008-07-23
81人中 74 人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
光市母子殺人事件。妻と子を惨殺され、残された本村さんは、9年間、 ある意味で「人の死を実現させるための闘い」を続けてきた。 その間、彼はさまざまな形で「死」と向き合う。 犯人の少年に最初司法は、死刑判決を下さなかった。しかし本村氏はそれに 敢然と立ち向かう。ときにエキセントリックとさえ思えるほどのその言動に 違和感を覚える人もいただろうし、心ないマスコミの批判にもさらされた。 しかし本村氏は、自分の気持ちに正直に、「闘った」。本書はその歴史である。 本書を読むと彼の行動がただの「仇討ち」ではなかったことがわかる。 むしろ、9年の間に木村氏は揺るがない死生観を身につけていった。 本書のすばらしさは、単に犯人の青年や弁護団を攻撃するのではなく、 絶望と苦悩の余り自殺を考えた本村氏の闘いに正面から向き合った点である。 行間からは本村氏の義憤だけでなく、悲しみや死生観がにじみ出ている。 死刑制度に対する意見は様々だ。私は必ずしも死刑賛成ではない。 「人が人を殺す」ということは、死刑という形であれ、 それはそれで重いものだと思う。 しかし、犯罪被害にあった家族が泣き寝入りし加害者が手厚く保護される国は 本当の民主主義国家とはいえない。 死刑廃止論者も、肯定派の人も読んでほしい一冊だ。 本村氏を支える人たちの心理描写も、きちんとなされており、内容にふくらみをもたせている。
命、家族、裁判、憎しみ、司法の壁、そして・・・・
2008-08-27
55人中 49 人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
想像できるだろうか。 何気ない日常の中で今日も1日が終わる。夕食の献立を楽しみにしながら軽い疲れとともに帰途につく。この世で最もくつろげる場所であるはずの自宅に戻ると、暖かい会話や柔らかい明かりのかわりに奇妙に静まり返った冷たい暗闇が広がっている。そしてそこに変わり果てた最愛の妻の姿を見つけてしまったら・・・。 本の扉に掲載された本村氏と弥生夫人、そして愛娘の夕夏ちゃんの写真を見て欲しい。学生のような面影さえ残る若い両親と丸々とした可愛い赤ちゃんの姿は、どこにでもある幸せな家族のそれだ。この日から実に9年、本村氏は闘う。正しい事を正しいのだと訴え続けて、ただひたすらに闘う。 憎しみ、絶望、孤独、そして埋めようのない喪失感。本村氏は何度も自殺を考えながら、ただただ闘って、そして死刑判決を勝ち取った壮絶な記録の書だ。 TVで見る限りいつも冷静沈着に、且つ、理路整然と自分の考えをことばにしていた本村氏の、決して表に出なかった犯罪被害者としての苦しみに身を切られる思いがする。 日本は法治国家である。でもそれは真に正しい法治と言える状態なのか。死刑判決を勝ち取るまでなぜ、山口地裁・広島高裁・最高裁・差し戻し広島高裁と9年もの長い時間を必要としなくてはならなかったのか。犯罪を犯す者がいる限り、誰でも等しく犯罪被害者になってしまう可能性がある。だからこそ多くの人に本書を読んで欲しい。 他人事では決してない。
正解の出ない多くの問題を、考えさせられる一冊です
2008-09-19
23人中 21 人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
とにかく迫力のある一冊でした。 文面から本村さんの感情が溢れるようで、一つ一つの文章が濃く、勢いに押されるように読み進みました。 ニュースで見かけた本村さんは、いつも毅然と正面を向いて、何か大きなものと闘い続けている姿がとても痛々しく見えていました。 でも、犯人以外に「何」と闘っているのか、今まで知り得なかった詳細が分かり、ようやく事件の全容と、本村さん本人を知る事が出来ました。 司法の抱える大きな問題、特に被害者や被害者家族に対する配慮の無さ、あまりのお粗末さに怒りを感じます。 それとマスコミ報道。被害者家族の傷口に塩を塗りこむ行動を取りながら、正義の味方ぶった論調。 それらの中での、本村さんの痛々しいくらい毅然と闘う姿。 少年法や実名報道、死刑問題、これらはあまりに問題が大き過ぎてすべてに賛同する事は出来ませんが、本村さんの思い・筆者の思いは深く伝わりました。また、裁判官の実名表記には、筆者の闘う姿勢が見えました。 普段見落としていた事・見ようとしていなかった社会の問題点を、深く考えさせられました。
人を殺すと言うこと
2008-07-30
34人中 16 人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
とんでもない人生を歩み始めた人。と、当時のニュースを見て感じました。 一体この人の人生はどうなるのだろう。 ゴールはあるのだろうかと。 若い家族が18歳の性衝動により、一瞬にして消えてしまう。 仇討ちを許さないのが法治国家であり、体制を維持するのが法の目的だと 達観していたつもりでしたが、本村氏の躊躇しない慟哭に共感を覚えました。 本村氏のエネルギーが世論のバランスを崩し、法律を変えていきました。 しかし、この本を読んでも少年Fの狂気の根底は見えないし、死刑制度も肯定できない。 少年法もさることながら精神障害が有れば無罪になるし、戦争では英雄になる。 一気に読んでしまった本書であるが、自分の中では何ら問題が解決しない。 とても重たい読後感です。