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前衛でもあった小島信夫
2006-10-28
14人中 9 人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
小島信夫が亡くなった。近年、保坂和志のエッセイなどで高く評価されていたこともあって、この大作家の真価が随分と知られるようになったようだ。当方も保坂の文章に触れなかったら、改めて読み直すこともなかった。戦後の作家では、三島、安部、大江がトップランナーとされていたが、いずれもどこかで読んだような作品が多い。特に前衛と言われた安部公房の作品は『箱舟さくら丸』など晩年の長編に顕著な作り物めいた、安手のSF風がちっとも世界文学ではなかったことに思い至る。『抱擁家族』は違う。何かもやもやとしたものが、読後も後をひく。「カフカ的不安」とはまさにこの作品にこそ相応しい。漂うような、しかも視点が散漫に見える「文学ぽく」ない文体が、一見少しも知的なイメージを与えない。しかし、これこそが小説だという保坂の指摘は誠に慧眼である(『カンバセーション・ピース』はこの域にまで達していない)。遺作の『残光』では、小島自身の日常が創作活動との間で揺曳しているような作風であるが、これには少しついていくのがしんどい。
60年代半ばの、社会の急激な変化への憂いと諦め
2004-12-30
19人中 9 人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
日本のアメリカ化が本格に進み始めた戦後10~20年の時期の、日本社会が崩壊・変形していく姿を、一家庭の壊れていく姿を通して、象徴的に描いているのが本書ではないでしょうか。その暴力的ともいえる変化の要請は、家庭に入りこんでくる米兵ジョージ(情事?)の存在、最新式の欧米風住宅を建てる、などのプロットを通して表現されていきます。主人公のなすすべもなく押し流されていく様子と、したたかに適応して生きていく子供たちの姿が、時代の変化をなにより雄弁に語っているように思いました。1960年代半ばの、社会の急激な変化への憂いと諦めがこの小説の底に流れているように思います。その意味できわめて同時代的な小説なのでしょう。今読むと若干鮮度は低いです。21世紀には多分書かれない文章なのではないでしょうか? なぜなら現代には現代の問題が存在するからです。それでもあえて今日的な意義を見出すとするなら、本書はわれわれが抱える近代化のもたらした問題の発露を予見していたということになるでしょうか。
芯から図太い
2003-10-29
17人中 8 人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
一言で言えば「ぶっとい作品」です。安部公房や三島由紀夫のような(この二人、タイプ全然違いますけども)才気走った鋭さは感じませんが、ある種の野蛮さがあります。タバコで言えば「ショートホープ」のように短くて濃厚な味がする作品と言えるでしょう。タバコを吸わない人には判らないでしょうが。安部や三島とは違って「地味」なスタイルなので一般受けはしないでしょうが、淡々と進んでゆく展開の中に潜む小島信夫の「凄み」に驚かされるでしょう。ただし、文体が古いので取っ付けない人もいるでしょうが。
波長が合えば絶対面白いはず
2003-03-20
25人中 23 人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
講談社文芸文庫は少し高いので,心配な人は新潮文庫のアメリカンスクールを味見して下さい.村上春樹も紹介しているように,新潮文庫の中の「馬」という短編が,この本の下敷にあるようです.「馬」や「アメリカンスクール」を読んで面白いと思ったら,是非この「抱擁家族」を読まれることをお薦めします.個々の文体は平易で軽いというか,不思議な感覚です.歌で言うと一般の人とちょっとはずれたキーなんだけどはずしてない,という感じでしょうか.しかし,全体の構成はハードというか,読後はずっしりしたものを感じます.さっと読めるんだけど,結構残ると言うか,とにかく読んで下さい.僕も何年か前に家を手に入れましたが,その中身の家族はどうなのか,どうしたいのか,そんなことを考えながら読みました.
レビューに引かれて購入しましたが…
2002-08-01
37人中 15 人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
この作品が発表された当事と今ではあまりにも感覚の差が有り過ぎるようで、最後迄読み切るのがやっとというのが正直な感想です。これをベースにリメイクされた作品があれば、面白い仕上がりになるかも知れません。古典作品として読まれる方は別として、お勧めはしません。厚さ1cmにも満たない文庫本でこの価格というのも高いと感じました。