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ジャック・クリスピン曰く
2008-12-20
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初出は2004年7月。作者自身が一番達成感があった、と言うのも頷ける。キャラタ・伏線・構成どれをとっても『伊坂ワールド』が完成したと確信できる傑作だ。 『グラスホッパー』は殺し屋の話だ。ただいつもに増してリアリティがあって、まるでジェフリー・ディーヴァーを読んでいるような感覚に襲われた。普通の日常に出てくるキャラクタがすっぽりはまって何の違和感もない。交差点で待っていて、後ろに『押し屋』がいてもなんらおかしくないし、日々ニュースで伝えられる自殺の現場に『鯨』が実はいてもおかしくない。犯人不明の殺人現場に実は『蝉』がいても不思議ではない。そういうところがこのストーリーをより刺激的にしていると思う。 ところで文中によく『ジャック・クリスピン』という奴の台詞がで来るのだが、聞いたこと無い人名なので検索してみたが・・・どうも伊坂の創作した人物らしい。このあたりも実に面白い。
奇妙な現実感。
2008-11-01
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伊坂幸太郎は実に巧みな文章を書く。伏線の張り方には 独自のテイストが溢れており、テンポの良い文章は小気味良く 読み手の脳内を踊る。固定ファンが多いのも頷ける。 本作のテーマは「殺し屋」、主要人物は2人の殺し屋と妻を 自動車事故で亡くした1人の男。人が次々と死に、それらの生死が 淡々と紡がれていく世界。どう考えても現実離れしているのだが、 にも関わらず奇妙な「現実感」を感じてしまう。そこに伊坂の 表現力の妙がある。 常軌を逸した冷酷無比な表現は好みが分かれるかもしれないが、 独特のブラック・ユーモアがそこかしこに軽快に塗されており、 所謂「ハードボイルド」的な重さは感じられない。 最後まで一気に読めるはずだ。 ナイフ使いの「蝉」、自殺専門の殺し屋「鯨」というキャラ立ちした2人。 主要人物が何しろ「殺し屋」なのだから、彼等に感情移入して楽しむ タイプの小説ではない。一般人であれば、そもそも殺す側、 殺される側の感情の機微に自分を重ねることなど、はなから できやしないのだ。無論、フィナーレに救いを求めてもいけない。 法規社会では決して許されない殺しを新しいタイプの「エンタメ」 小説として仕上げた、そこに作者の意図がある。
死者の言葉
2008-10-26
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「魔王」を読んでから「グラスホッパー」を読んだのだが、舞台装置は全く違うけれども、内容はかなり似ていると感じた。そもそも読もうと思ったきっかけは、週刊少年サンデーの連載なのだが、あちらでは2作品が再構成されている感じなので、そもそも言いたいことは同じだったのかもしれない。 最後まで救いはないし、結局は自分たちの知らない所で事件は収束してしまうわけだけれども、実際の世界もそんなものかもしれない。
最後の1行を読んだ時、もう一度読み返したくなりました
2008-10-19
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「元教師:鈴木」「自殺専門の殺し屋:鯨」「ナイフつかいの若者」の3人の視点から、「押し屋」と呼ばれる殺し屋を追いかける話の展開。 3人の視点の移り変わりで1つの話が流れるというわけではなく、3人それぞれのストーリーが、どこかしらでそれぞれが関わり、最終的に1つの結末に向かうというストーリーです。 その話の流れ方に特別、目新しさは感じないのですが、「「押し屋」の正体は?その行く末は?」がとにかく気になり、最後まで夢中で読みました。 確かに数多くの人達が、殺し屋達によって何の躊躇もなく殺されます。 そのシーンだけ見たら、非常に残忍で暗くて重苦しいです。 しかしその殺し屋達も、「かつて自分が殺した人間の亡霊」を見たり、映画の不遇な主人公を自分と重ね合わせるなど、今現在の自分にたとえ無意識でも満足していないんだという一面を見せられたり、話の過程で子供がからんできたりする所などは、全体としては暗さ、重さを軽減させる要素となっています。 何より終盤でそれまで思いもよらなかった展開があり、その時点でそれまでに伏線が敷かれていたことに気づくなど、読み終わった今、小説としてよく作りこまれている印象が強いですね。 特に最後の1行を読んだ時、まだ何か気づいていない部分があると感じ、もう一度読み返したくなったのは私だけでしょうか…。
人間は虫に近い
2008-09-20
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最初の1ページ、人間は、動物よりもむしろ虫に近いのではないか というのが筆者の問いかけかと思います。虫という意味は、感情、愛がないという意味です。4人+αの登場人物がでてきますが、それぞれの登場人物が、人間、動物、虫、植物の象徴になっており、読者は基本的に人間の鈴木以外には感情移入はできない設定だと思います。その象徴の4人は殺し屋で、いずれ対決するのか、いったい誰が勝つのか!?、話の進み方自体非常に面白く読み応えのある展開ですが、いったい最後はどういう結末になるのか読んでいてわくわくする作品でした。世の中にはこんなに虫けらみたいなやつがいるという風刺も、筆者の弱者に対する同情を感じます。